雪と桜と天の川 新潟県魚沼市の星空
週末の日本列島は、高気圧にすっぽり覆われ晴れ渡りました。月が夜半前に地平線に沈み、その後、明け方にかけて夏の天の川を楽しめる絶好の機会に、星空を見に出かけない手はありません。
少し時間と費用がかかるため、現地が絶対に晴れているという確信がなければ、なかなか行きづらいのですが、晴れを確信できた今回はレベルの高い星空を求めて新潟県魚沼市に行ってきました。
関越自動車道を使って4時間程度かかりますが、新潟県魚沼市から福島県只見町に抜ける国道252号線沿いには、同じ時間をかけて関東から行ける他の地域に比べて一際綺麗な星空が広がっています。
関東の最高気温が30℃近くに迫る中、長袖で出発しようとして、途中ではたと引き返し、ダウンジャケットを追加で持って出掛けることにしました。現地の夜は、寒いかなと思ったのですが、ダウンを持っていって正解でした。
目次
撮影場所
車で国道252号線を新潟県側から福島県側に移動したいと思っていたのですが、夕方ごろ現地に着くと道の両脇や日影の部分に雪がまだ大分残っています。そして、国道252号線はまだ県境付近で雪に閉ざされ通行止めでした。このあたりでも昼間の気温は20℃近くあり、雪が降るほど寒いとは感じなかったのですが、まだ積雪が残っているというのは、冬の間にどれだけ多くの雪が積もっていたのでしょうか。
とりあえず、車で行ける奥只見レクリエーション都市公園浅草岳地域という所に向かいました。波間川ダムのダム湖の近くで、周囲は山に囲まれていますが、見通しは悪くなく、ポータブル赤道儀の極軸を合わせるための北極星も見えるので、星空の撮影には向いています。標高は500m程です。
下の写真は、新潟県魚沼市の4月22日の様子です。山や田んぼには、まだ雪が残っていましたが、桜も咲いています。この付近は、米どころとして知られていますが、この雪の多さも関係しているのでしょう。雪はここ数日の暖かさもあり、急激に溶けて川は勢いよく流れていました。
星空の写真
夜半に上弦少し手前の月が沈んだ後、東の空には早くも夏の大三角や夏の天の川が昇ってきています。シグマ18-35mm F1.8 DC HSMレンズを使用して夏の大三角と天の川を撮影しました。ここでは、光害の影響が少ないため、目視でも天の川の様子がはっきりと確認できます。写真を撮っても空の明るさが天の川の明るさを超えないので、天の川が際立ちます。時間をかけて来た甲斐があったと思える星空です。
シグマ18-35mm F1.8 DC HSMのレンズを使用して撮影した、さそり座付近の天の川の様子です。銀河系中心方向のひと際濃い天の川の様子が、はっきり鮮明に写ります。周囲はまだかなりの雪が残っており、明け方には気温が4℃程度まで下がっていました。 夏の天の川と残雪が一緒に見られるのは、今の時期のならではの光景です。
さそり座付近の天の川と星々が、波間川ダムのダム湖に反射する様子を焦点距離10mmの広角レンズ シグマ10-20mm F3.5 EX DC HSMを使用して写してみました。少し風もあり水面が波立っているのか、水面に映った星は、だいぶぼやけてしまっています。
山に隠れてさそり座のしっぽ付近の低い空の星が見えづらいのですが、それ以外は、ほんとに良い星空です。
銀河系中心部付近の天の川を最近購入したレンズのシグマ18-35mm F1.8 DC HSMのワイド端焦点距離18mmで撮影してみました。画面いっぱいに広がる天の川のより細かい部分まで、はっきりと写っていました。
奥只見レクリエーション都市公園浅草岳地域で、星空を堪能(たんのう)したあと少しふもと側に移動して桜と星空の写真を撮ることにしました。
桜と夏の大三角付近の天の川をシグマ10-20mm F3.5 EX DC HSMで撮影した一枚です。4月22日の午前4時ちょっと前に撮影したのですが、もう日の出前の薄明で空が明るくなり始めていました。日の出が思ったより早くなっていてびっくりです。1ヶ月前に霧ヶ峰で撮影した時には、午前4時ごろは十分に暗かったのですが、1ヶ月で1時間近く日の出が早くなっている印象です。
湯沢町中央公園の桜
帰りの途中にある湯沢町中央公園で桜を見て帰ることにしました。魚沼市や湯沢町付近では、ちょうど桜が咲いていました。ソメイヨシノは、花が散ってしまっていたり花吹雪となっていたりしていますが、中央公園の池の周りに植えられたしだれ桜は、見頃でした。赤い欄干の太鼓橋とピンク色のしだれ桜の咲き誇る日本的な光景に風情を感じます。
植えられているしだれ桜は、八重桜の系統のようです。
湯沢町中央公園は入場無料で近くに無料駐車場もあり、多くの家族連れで賑わっていました。関東地方からは、越後山脈を越えたところにある新潟県湯沢町ですが、この時期に桜が見られるとは思いませんでした。標高はそこまで高いわけではないのですが、日本海側の湯沢町や魚沼市と関東地方の間には結構気温に差があるようです。
関連する書籍の紹介
撮影に使用した機材の紹介
ポータブル赤道儀
今回の撮影に使用したポータブル赤道儀は、kenkoのスカイメモSです。(微動雲台、アリガタプレート、バランスウェートは使用していません)
ポータブル赤道儀を購入する際に、Vixenのポラリエと迷ったのですが、スカイメモSの形の方が一般的な天体望遠鏡用赤道儀と同じフォルムで安心感があったこともあり、スカイメモSを選びました。
実際にカメラ用三脚に取り付けて撮影しようとすると天体望遠鏡用赤道儀に比べ安定感がなく、大丈夫かなと心配になりましたが、現状では期待以上の結果を出してくれています。
※この手のポータブル赤道儀を使用してカメラで星空を撮影する場合は、三脚とポータブル赤道儀の固定用とポータブル赤道儀とカメラの固定用に2個の雲台が必要です。
カメラ
カメラは、Canon EOS70Dを使用しています。
星空の撮影をしていて、思いのほか役に立っているのがWi-Fi接続機能です。iPadやiPhoneとカメラをWi-Fi接続することで、iPadやiPhoneなどのスマホやタブレット端末からワイヤレスで基本的なカメラ操作(レリーズ、絞り、ISO調整など)ができ、撮影した写真の確認もスマホやタブレット上ですぐにでき、各値の調整に役立っています。
星空の撮影では露出時間が必要なため、以前であれば長時間、夏の蚊や冬の寒さにさらされていたのですが、ワイヤレスになったことでカメラのセッティングができれば、撮影は近くに停めた車の中から出来るようになりすごく快適になりました。
現在EOS70Dの後継にあたるEOS90Dが発売されています。
レンズ
レンズは、シグマ10-20mm F3.5 EX DC HSMとシグマ18-35mm F1.8 DC HSMを使用しています。星空のみ写真ではあまり変化がないため、地上の景色と一緒に撮影する星景写真において、EOS70DのキットレンズEF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STMでは、星空と景色を一緒に広範囲にとらえきれないため、より広角のレンズを購入しました。その後、TOKINA AT-X 11-20 PRO DX CAFが発売され、星空の撮影用として評判が良いようです。
シグマ10-20mm F3.5 EX DC HSMキャノン用へのリンク(スポンサーサイト)
SIGMA 超広角ズームレンズ 10-20mm F3.5 EX DC HSM キヤノン用 APS-C専用 202545
- 出版社/メーカー: シグマ
- 発売日: 2009/07/03
- メディア: エレクトロニクス
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
TOKINA AT-X 11-20 PRO DX CAFキャノン用へのリンク(スポンサーサイト)
Tokina 超広角ズームレンズ AT-X 11-20 F2.8 PRO DX 11-20mm F2.8 Canon用 フード付属 APS-C対応 634394
- 出版社/メーカー: トキナ
- 発売日: 2015/02/20
- メディア: エレクトロニクス
- この商品を含むブログを見る
最近、星空の撮影用に追加で購入したのが、シグマ18-35mm F1.8 DC HSMです。
広角側の焦点距離は18mmで、シグマ10‐20mm F3.5やTOKINA AT-X11-20mm F2.8よりも視界は狭くなりますが、シグマ18-35mm F1.8の魅力は何といってもF1.8という明るさです。これまで主に使用していたシグマ10‐20mmF3.5に比べて4倍明るいため、これまでより露出時間を1/4に短くすることができます。
天の川の撮影には、F3.5、ISO1600の設定で1~2分の露出時間で撮っていたのが、シグマ18-35mmF1.8では、15~30秒程で済むことになります。赤道儀を使って星景写真を撮る場合、露出時間が長いと地上の景色が流れるのが気になるのですが、そのような問題を緩和してくれます。もしかしたら、赤道儀を使用しなくても星を点で写せるレベルです。画像もシャープで、これからの撮影で出番が増えそうな感じです。
シグマ18-35mm F1.8 DC HSM キャノン用へのリンク(スポンサーサイト)
SIGMA 標準ズームレンズ Art 18-35mm F1.8 DC HSM キヤノン用 APS-C専用 210540
- 出版社/メーカー: シグマ
- 発売日: 2013/06/28
- メディア: エレクトロニクス
- この商品を含むブログ (4件) を見る
桜巡り2018④ 長野県 南信地方の桜と星空
今回は、長野県南部へ桜や風景や星空を見に出掛けてきました。
星空の村として知名度を上げている阿智村や南アルプスの山々を望む急斜面に民家や農地が点在する下栗の里や桜の名所である高遠城址公園などの魅力的なスポットを一気に巡ります。
目次
長野県は内陸にあり標高が高いため、関東の平野部でソメイヨシノが散ったこの時期でもまだ桜を楽しむことができます。目的地までの道中でもまだソメイヨシノが咲いていました。日中の気温は、20℃くらいまで上がりますが、夜間はまだ寒かったです。
阿智村の桜と星空
まずは、最初の目的地の阿智村へ向かいます。阿智村の園原には、「駒つなぎの桜」と呼ばれるエドヒガン桜の大木があります。中央自動車道の恵那山トンネルの長野県側出入口がある付近です。道は少し細いですが所々に案内板があり、それに従って車を進めました。駒つなぎの桜まで800mの所に広拯院月見堂というお寺と駐車場があり、その地点まで車で行くことができましたが、そこから駒つなぎの桜までは、渋滞防止のため車を降りて歩く必要があります。周囲の景色を眺めながら、ゆっくり坂道を登っていくと駒つなぎの桜に辿り着きました。
立派な枝ぶりの大きな一本桜です。咲き始めで見頃はまだでしたが、年月を感じさせるうねった太い幹と枝先に咲き始めた霞のような桜の花が、枯れ木に花を咲かせる「花咲じいさん」の童話を思い出させるような桜です。満開時はとても華やかな感じになるのだろうなと思います。
案内板には、
「義経駒繋ぎの桜」といわれ、吉次に導かれ源義経が奥州に下向するとき、この木に馬を繋いだといわれています。 エドヒガン桜で目通り4m、高さ約20m。
老木は朽ちはて、今のはひこばえであるともいわれています。四月下旬には美しい花にかざられます。
という桜にまつわる伝説が書いてありました。 義経云々の伝説がなくても十分に魅力的な桜だと思います。
「駒つなぎの桜」を見たあとは、夜を待って星空を眺めます。すぐ近くには、「ヘブンスそのはら」というスキー場があり、スキー以外に星空見学ツアーを行っているようです。リフトやゴンドラを使って高い所まで登り、星空を眺めることができるのですが、ツアーでは時間等の制約で自由に撮影することが難しいため、他に撮影できる場所がないか探してみます。
園原地区は谷沿いの集落のため、山に阻まれてなかなか空を広く見通せる場所が見当たりません。グーグルマップやナビでみると神坂峠という長野県と岐阜県の県境の峠に向かう道があったのでその道を車で進んでみましたが、なんと途中で行き止まりとなっていました。
車を降りて登山ならば行けるようですが、そのような準備はしていないので峠に向かうことをあきらめ、途中にあった少し開けた「智里グラウンド」で撮影を行うことにしました。
上の写真は、智里グランドの周囲の桜?桃?の木と背後の山影から登る夏の天の川です。写真では天の川が写っていますが、実際に目で見た感じでは空が明るいため、比較的明るい夏の天の川でもうっすらと見える程度でした。もう少し暗い空を期待していたので、少し期待外れの感があります。
後で調べてみたところ、阿智村でも南の方の治部坂高原付近にある浪合集落で撮影された星空の写真によって、2006年に環境省から星の観測に適していると認定されたようなので、そちらの方がより綺麗な星空を見れるのかもしれません。今度機会があれば、行ってみたいと思います。
下栗の里の景色と星空
阿智村から自動車で60kmほど走ると遠山郷の下栗の里にたどり着きます。途中で通る国道152号線は、諏訪湖の近くの長野県茅野市から日本を貫く大断層である中央構造線沿いに南へと伸びているのですが、よく見ると途中の地蔵峠で国道が一旦途切れているため、茅野から下栗の里がある遠山郷まで国道152号線を通ってすんなり来れる訳ではないんです。以前に諏訪から遠山郷まで152号線を使って移動しようとしたとき途切れていることに気づき、すごく驚きました。
飯田市街地方面から、国道474号線の矢筈トンネルを通り遠山郷へ向かいます。ちなみに近くを走っている国道256号線でも飯田市街から遠山郷に抜けられると思い走っていたら、通り抜け不可の看板があり引き返すことになりました。この付近の道路事情は、冬季通行止めも含め、よそ者にとても分かり難いです。
そんなこんなもありながら、くねくねとした山道を登ってゆき、下栗の里の「ばんば亭」の前の駐車場に辿り着きました。
駐車場から見た下栗の里のパノラマ写真です。左の方には、南アルプスの聖岳なども見えており眺めが良いのですが、よく見る下栗の里の写真の風景とは、違うようです。というのも下栗の里として有名な風景は、この駐車場から徒歩で山道を20分ほど歩いたところにある「天空の里ビューポイント」に行く必要があるのです。
ということで、「天空の里ビューポイント」まで歩いてみます。
「ばんば亭」前の駐車場から舗装された道を少し登ると「天空の里ビューポイント」に続く山道の入り口の案内板があります。
入口付近は写真のようにコンクリートで整備されていますが、進んでいくと周囲は急斜面で道が細くなり、慎重に歩いていく必要があります。
山道は杉林の中を続いており、道中の見通しは良くなく薄暗いです。それにしても、こんな急斜面の杉林だと、間伐をしたり木材として切り出したりするのも大変そうです。 山道をしばらく歩いた先に「天空の里ビューポイント」が見えてきました。山の上の方に出るのかと思っていたら、想像とは違い急斜面に足場が組まれた造りの展望台でした。
展望台は、定員40名ということで、多くの人が同時に展望台に上がることはできないようです。展望台に登って谷側の方を見ると、急斜面に民家や畑が点在する「下栗の里」の風景を見ることができました。
「天空の里ビューポイント」展望台や展望台に続く山道は、地元の有志の方が観光客のために整備された道だそうです。このような急斜面に道を整備した地元の方の熱意に感謝です。
前回しらびそ高原に来た時には、近くに「下栗の里」があるということに気付かないまま帰ってしまいましたが、ちょうど紅葉のシーズンだったこともあり「下栗の里」の紅葉を見ることなく帰ったことは、もしかしたらとても残念なことだったかもしれません。
「ばんば亭」前の駐車場に戻り、夜を待って星空を眺めたいと思います。下栗の里は、以前にこのブログで紹介したしらびそ高原に近いため、しらびそ高原で見たような光害の少ない、綺麗な星空が期待できます。
「ばんば亭」前の駐車場は、南側の空は比較的開けているのですが、北側に山が迫っており、ポータブル赤道儀の極軸合わせを行うときに北極星が見えるかが気になっていたのですが、木々の合間に北極星がかろうじて見え、北極星を使って極軸合わせを行うことができました。
上の写真は、「ばんば亭」前の駐車場から撮影した、暗くなり始めた夜空に輝く冬の星座の様子です。この時期、太陽が沈んだ後には、まだ冬の星座が西の空に見えています。おおいぬ座のシリウスとこいぬ座のプロキオンとオリオン座のベテルギウスの3つの一等星を結んだ冬の大三角や、それよりも大きな冬の大六角形もまだ確認できます。冬の大六角形は、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオン、ふたご座のポルックス、ぎょしゃ座のカペラ、おうし座のアルデバラン、オリオン座のリゲルの6つの一等星を結んだ六角形で、冬のダイヤモンドとも呼ばれます。
「下栗の里」の夜空は期待通り綺麗だったのですが、残念ながら西側の方からすぐに薄雲に覆われてしまいました。北側の空を見上げると常夜灯の明かりが差し込んできますが、南や西の空は、そのようなこともなく観測に向いていると思います。
- 作者: 沼澤茂美/脇屋奈々代
- 出版社/メーカー: ナツメ社
- 発売日: 2007/07/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 3人 クリック: 21回
- この商品を含むブログ (7件) を見る
遠山郷 旧木沢小学校
「下栗の里」から山道を下りて国道152号線に出た後少し走ると、木造校舎が懐かしさを感じさせる旧木沢小学校に着きます。廃校になった校舎が保存され、資料館などとして活用されています。中に入って見学することもできます。
木造校舎を星の日周運動とともに撮影してみました。夜空は十分に暗く多くの星が見えます。ただ街灯の明かりのみの照明で撮影した校舎は、学校の怪談風の少し不気味な感じになってしまいました。もっと暖かい感じに仕上げたかったのですが、なかなな上手くいかないですね。また、トライしたいと思います。
高遠城址公園の桜
今回の旅の最後に、高遠城址公園の桜を見に立ち寄りました。高遠城址は、「さくらの名所100選」にも選ばれている桜の名所です。周囲の町より少し高くなっている城跡には、多くの桜の木が植えられています。行った時には、桜が散り始めている頃でした。
園内の桜雲橋の桜の花も、折から降り始めた雨によって花を散らしています。
池の水面も桜の花びらで埋め尽くされて、ピンク色に色付いていました。
今年は暖かい日が続き、比較的標高が高い南信地方でも桜の見頃が過ぎつつありますが、まだ桜が見られる所もあると思います。
日本の懐かしい景色や綺麗な星空が広がる南信地方を桜の季節に巡ることができたのは、とても良い経験になりました。