H-ⅡAロケット打ち上げと種子島の星空の記録 ~種子島 恵美之江展望公園~
九州の南に浮かぶ種子島の恵美之江展望公園にH-ⅡAロケット37号機の打ち上げを見学しに行ってきました。
恵美之江展望公園は、ロケット発射時に立ち入り制限がある発射場から半径3kmのすぐ外側に位置しており、ロケット発射を一番近くで見ることができるスポットです。テレビ局のカメラなど報道関係者も打ち上げの撮影に来ていることからも、なるべく近くで見たい人にとってのベストスポットだと思います。
また、恵美之江展望公園ではロケット打ち上げのカウントダウンも実況されているため、発射までの残り時間が少なくなってくる緊張と興奮を味わうことができます。
ちなみに、恵美之江は「えみのえ」でなく「えびのえ」と読むのだそうです。
目次
恵美之江展望公園とロケットの発射場(吉信射点)の様子
H-ⅡAロケット37号機は、気象変動観測衛星「しきさい」と超低高度衛星技術試験機「つばめ」を載せて2017年12月23日午前10時26分22秒(秒数まで決まっている!)に打上げ予定のため、前日の22日の夕方から現地に入り、打ち上げを待つことにしました。細くて分かりにくい道を車で進んで恵美之江展望公園に到着すると、既に10名以上の人が打ち上げを待っています。
上の写真は、発射前日の恵美之江展望公園を駐車場の入口側から見た様子です。多分普段は、車で入ることができない芝生の部分が駐車場として開放されています。近くにきれいな公衆トイレも整備されており、打ち上げまでの待ち時間を比較的快適に過ごせそうです。駐車場はこの後、夜半過ぎにはほぼ埋まり、発射当日の明け方には、かなり遠くの駐車場に停めざるを得ない状況だったようです。
上の写真は、発射前日に撮影した恵美之江展望公園から南側に見えるロケット発射場の様子です。
湾を挟んだ向かい側の岬に発射場の設備として、左から第1射点と呼ばれるH-ⅡAロケットを打ち上げる場所、第2射点と呼ばれるH-ⅡBロケットを打ち上げる場所、大型ロケット組立棟、80m気象塔などが見えます。今回は、H-ⅡAロケットの打ち上げなので、第1射点から打ち上げることになります。写真を撮った時点では、H-ⅡAロケットは大型ロケット組立棟の中にあり、今回の打ち上げでは夜8時過ぎ頃に大型ロケット移動発射台に乗せられて第1射点まで移動するそうです。
第1射点と第2射点には、それぞれ2本ずつ気象観測と避雷針の役目を担う塔が立っており、射点の目印になっています。
打ち上げの為H-ⅡAロケットが第1射点に移動したとき、恵美之江展望公園から見ると避雷針の塔とロケットが完全に重なってしまうのが、恵美之江展望公園の残念な点です。(詳細は後述)
ロケット発射場は、種子島宇宙センターのホームぺージに「世界一美しいロケット発射場」と書かれている通り景色の良い場所にあり、恵美之江展望公園はその景色を眺めるのにも最適な場所だと思いました。
上の写真は、恵美之江展望公園から見たの景色です。波に削られ切り立った崖や、南の島の透明度の高い海や、丸い水平線やぷかぷかと浮かんだ雲など、ロケット以外でも印象的な景色が広がっています。
恵美之江展望公園の星空
上の写真は、打ち上げ前日の夜に撮影したH-ⅡAロケットの発射場(吉信射点)の星空の様子です。23日の0時頃夜空に雲一つない晴天になりました。この時すでにロケットは第1射点に移動しており、ロケットを照らすサーチライトが写真の下中央でひと際明るく写っています。空には、オリオン座の1等星ベテルギウス、おおいぬ座の1等星シリウス、こいぬ座の1等星プロキオンの3つの明るい星を結んだ冬の大三角が静かに輝いています。大型ロケット組立棟の上には、りゅうこつ座の1等星のカノープスを見ることができました。カノープスがこの高さに見えたことで、だいぶ南に来たという実感が湧きます。
種子島は、光害の影響が少なく夜空が暗いため星が良く見えます。ただし水平線近くでは、海からの水蒸気の影響なのか、もやがかかったように見えづらくなります。
恵美之江展望公園で撮影した星空の様子は、下の記事を参照ください。
H-ⅡAロケット発射場の夜景&朝焼け
上の写真は、打上げ前日の夜の発射場の様子です。恵美之江展望公園からレンズの焦点距離107mm(35mm判換算171mm)にて撮影しています。H-ⅡAロケットは、すでに大型ロケット移動発射台に乗せられて第1射点まで移動してきています。第1射点のロケットがライトに照らされて明るく輝いている様子から、発射前の緊張感が感じられます。
上の写真は、ロケット発射当日の発射場の朝焼けです。以前に八ヶ岳の標高1700mの高地でみたオレンジと青のコントラストが強烈な朝焼けではなく、穏やかな感じで朝が明けます。恵美之江展望公園からの景色は、時間帯に応じて色々な表情を見せてくれます。
薄い雲はかかっていますが、空は晴れて風も穏やかでロケット打ち上げには、影響なさそうです。
H-ⅡAロケット37号機打ち上げカウントダウン
ここからは、今回のH-ⅡAロケット37号機の打ち上げカウントダウンについて書きたいと思います。発射予定時刻が近づくと次第にテンションが上がってきますが、どの時点でどのような作業がされているのかカウントダウンの実況放送などから把握した内容を書きます。
※カウントダウン秒数は、実況放送が聞こえるタイミングで書いていますので、実際の作業タイミングとは、多少ずれていることもあるかと思いますが、ご容赦ください。
打ち上げ30分前・・・発射場周辺への放水が行われます。
上の写真は、レンズの焦点距離350mm(35mm判換算560mm)で写した第1射点上のH-ⅡAロケット37号機と射点周辺の放水の様子です。恵美之江展望公園から見るとH-ⅡAロケットが手前の避雷鉄塔と完全に重なっており、ロケット本体が見えづらくなっています。恵美之江展望公園内をあちこち移動してみてもロケットと避雷鉄塔が重ならずに見える場所は見つかりませんでした。
打ち上げ8分前(480秒前)より最終カウントダウンを開始
打ち上げ417秒前・・・安全系準備完了
打ち上げ409秒前・・・射場系準備完了
打ち上げ310秒前・・・衛星系準備完了
打ち上げ264秒前・・・自動カウントダウンシステム開始
打ち上げ180秒前・・・全システムの電源を外部から内部に切り替え
打ち上げ160秒前・・・1段液体水素系準備完了
打ち上げ 90秒前・・・1段液体酸素系準備完了、2段液体酸素系液体水素系準備完了
打ち上げ 33秒前・・・ウォーターカーテン散水開始
打ち上げ 16秒前・・・フライトモードON
打ち上げ 9秒前・・・全システム準備完了、駆動用電池起動
打ち上げ 2秒前・・・メインエンジン スタート
打ち上げ 0秒前・・・SRB‐A(固体ロケットブースター)点火
ここでアナウンスが入ります。
「気候変動観測衛星『しきさい』及び超低高度衛星技術試験機『つばめ』を搭載したH-ⅡAロケット37号機は、平成29年12月23日午前10時26分22秒に種子島宇宙センターから打ち上がりました。」
「打ち上げ以降ロケットの管制は吉信(よしのぶ)発射管制棟から竹崎総合司令棟に引き継がれています。・・・」
打ち上げ 96秒後・・・SRB-A燃焼終了
打ち上げ 106秒後・・・SRB-A分離
双眼鏡等を使えば、SRB-A(固体ロケットブースター)分離まで追うことが出来るみたいです。現地での打ち上げ見学は、ほぼこの時点で終了しますが、その後のロケットの状況はJAXAの打ち上げライブ中継を確認すると以下のように続きます。
打ち上げ239秒後・・・衛星フェアリング分離(高度165km)
打ち上げ365秒後・・・グアム局での衛星追尾を開始(高度317km)
打ち上げ393秒後・・・第1段エンジン燃焼停止(高度364km)
打ち上げ399秒後・・・第1段、第2段分離(高度377km)
打ち上げ410秒後・・・第2段エンジン第1回燃焼開始(高度395km)
打ち上げ898秒後・・・第2段エンジン第1回燃焼停止(高度792km)
打ち上げ973秒後・・・しきさい(GCOM-C)分離(高度793km)
打ち上げ3460秒後・・・第2段エンジン第2回燃焼開始(高度800km)
打ち上げ3468秒後・・・第2段エンジン第2回燃焼停止(高度800km)
打ち上げ3587秒後・・・つばめ(SLATS)搭載アダプタ分離(高度790km)
打ち上げ6478秒後・・・つばめ(SLATS)分離(高度482km)
以上、超低高度衛星技術試験機「つばめ」の分離により今回のH-ⅡAロケット打ち上げは、成功裡に完了しました。
ロケットの打ち上げを最後まで追ってみたのは、僕にとって今回が初めてでしたが、すごく奥が深いです。そして、種子島の風景や星空は、とてもきれいでした。
ブログを読んでくれた皆さんも是非ともロケット打ち上げ見学に足を運んでみて下さい。
打ち上げ関係者の皆様お疲れさまでした。
打ち上げ見学者のみなさんもお疲れさまでした。
撮影地
鹿児島県南種子町の恵美之江展望公園にてロケット打ち上げを見学しました。
おまけ
種子島宇宙センターの海辺の景色です。打ち上げを見学した後多くの人が、種子島宇宙センターを訪れているようです。近くの砂浜は12月だけど、泳ぎたくなるような雰囲気です。
撮影に使用した機材の紹介
ポータブル赤道儀
今回の撮影に使用したポータブル赤道儀は、kenkoのスカイメモSです。(微動雲台、アリガタプレート、バランスウェートは使用していません)
ポータブル赤道儀を購入する際に、Vixenのポラリエと迷ったのですが、スカイメモSの形の方が一般的な天体望遠鏡用赤道儀と同じフォルムで安心感があったこともあり、スカイメモSを選びました。
実際にカメラ用三脚に取り付けて撮影しようとすると天体望遠鏡用赤道儀に比べ安定感がなく、大丈夫かなと心配になりましたが、現状では期待以上の結果を出してくれています。
※この手のポータブル赤道儀を使用してカメラで星空を撮影する場合は、三脚とポータブル赤道儀の固定用とポータブル赤道儀とカメラの固定用に2個の雲台が必要です。
カメラ
カメラは、Canon EOS70Dを使用しています。
星空の撮影をしていて、思いのほか役に立っているのがWi-Fi接続機能です。iPadやiPhoneとカメラをWi-Fi接続することで、iPadやiPhoneなどのスマホやタブレット端末からワイヤレスで基本的なカメラ操作(レリーズ、絞り、ISO調整など)ができ、撮影した写真の確認もスマホやタブレット上ですぐにでき、各値の調整に役立っています。
星空の撮影では露出時間が必要なため、以前であれば長時間、夏の蚊や冬の寒さにさらされていたのですが、ワイヤレスになったことでカメラのセッティングができれば、撮影は近くに停めた車の中から出来るようになりすごく快適になりました。
現在EOS70Dの後継にあたるEOS80Dが発売されています。
レンズ
レンズは、EOS70Dのキットレンズとともにシグマ10-20mm F3.5 EX DC HSMを使用しています。星空のみ写真ではあまり変化がないため、地上の景色と一緒に撮影する星景写真において、EOS70DのキットレンズEF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STMでは、星空と景色を一緒に広範囲にとらえきれないため、より広角のレンズを購入しました。その後、TOKINA AT-X 11-20 PRO DX CAFが発売され、星空の撮影用として評判が良いようです。
SIGMA 超広角ズームレンズ 10-20mm F3.5 EX DC HSM キヤノン用 APS-C専用 202545
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