ミラーレス一眼とポータブル赤道儀で撮影したレナード(Leonard)彗星 (C/2021 A1)
今回は、ミラーレス一眼カメラとポータブル赤道儀を使用してレナード彗星(C/2021 A1)の撮影を行いました。ポータブル赤道儀と一眼レフを使用した彗星の撮影は2020年のネオワイズ彗星以来です。ネオワイズ彗星は、かなり明るい彗星だったため、一眼レフとポータブル赤道儀で彗星の尾まで写すことができましたが、レナード彗星はネオワイズ彗星ほどは明るくならない予測がでています。
今回のレナード彗星は、どのように写るのでしょうか。
【目次】
2021年12月5日未明に撮影したレナード彗星
カメラ | Sony α7Ⅲ |
レンズ | SIGMA 70-200mm F2.8 DG OS HSM Sports |
赤道儀 | ポータブル赤道儀スカイメモSを対恒星追尾モードで使用 |
ISO感度 | 6400 |
絞り値 | f/4 |
露出時間 | 20sec 56枚(total 1120sec) |
焦点距離 | 200mm(トリミング有り) |
その他 | 56枚のRAWデータをStellaImage8で加算合成後
レベル調整やトーンカーブ調整などを実施 その後トリミング |
実際に撮影したレナード彗星は、明るいわけではありませんが、尾も薄いながらもしっかりと写すことができました。彗星の核は印象的な青緑色に写っていました。彗星の動きが早いため、撮影している間に彗星が少し動き、核が長細く写っています。
絞り値を浅めのf/4として撮影した影響で、画像処理をした時の周辺減光が大きくでているため、中心部をトリミングしています。
焦点距離200mmでは、1枚当たり露出時間が20秒程度でもポータブル赤道儀で星が流れずに撮影することができます。当日は風があまりなかったので、ブレも少なく撮影には良い条件でした。
参考に加算合成する前の写真の1枚を載せておきます。若干レベル調整を行い明るめに調整していますが、この状態でも彗星の尾がうっすらと写っています。トリミングもしていない状態ですので焦点距離200mmでの彗星の見え方が分かると思います。
カメラ | Sony α7Ⅲ |
レンズ | SIGMA 70-200mm F2.8 DG OS HSM Sports |
赤道儀 | ポータブル赤道儀スカイメモSを対恒星追尾モードで使用 |
ISO感度 | 6400 |
絞り値 | f/4 |
露出時間 | 20sec |
焦点距離 | 200mm |
その他 | jpgファイルをPhotoshop Elementsでレベル調整 |
撮影機材の構成
レナード彗星を撮影した時の機材構成です。
ポータブル赤道儀を使用した構成での撮影を続けていますが、2021年から撮影機材について以前の構成から2点アップデートしています。
②ポータブル赤道儀とカメラの固定方法を自由雲台からスカイメモS用の微動台座に変更
【使用カメラ】 Sony α7Ⅲ
以前使用していたCanon EOS70Dに対してノイズ性能を良くするために購入しました。
EOS70Dでは天体撮影時の高感度ノイズが気になり高感度ノイズの少ないカメラを探しており、Sony α7Ⅲを選びました。
天体撮影以外でもオートフォーカス性能がEOS70Dに比べ格段に良いため、動きのある撮影でもピントの合ったシャープな写真を撮ることができます。ただ、ライブビューやファインダーの像にタイムラグがあるのがデメリットです。特に画面を横切るように動く被写体の場合、その影響をすごく感じます。
これまで使用していたCanon EFマウント用レンズをα7Ⅲで使用するためシグマのマウントコンバーターMC-11を使用しています。
【使用レンズ】 SIGMA 70-200mm F2.8 DG OS HSM Sports
今回のレナード彗星の撮影には、SIGMA 70-200mm F2.8 DG OS HSM Sportsを使用しました。F値2.8通しの明るいレンズです。焦点距離200mmでもレナード彗星の全体がフレーム内に収まります。
【ポータブル赤道儀】 Kenko スカイメモS&微動台座
以前に使用していた自由雲台では微調整が効かないため、今回は微動台座を使用しました。微動台座は、赤緯軸回転の微調整ができるようになっています。赤径軸回転の微調整は、追尾モータの正逆回転12倍速を使用することで行っています。赤経軸と赤緯軸の微調整を行うことで、目標の天体を捉えることができます。カメラは微動台座に直接固定することで振動にブレを抑えています。
微動台座は望遠レンズを使用した星雲などの天体撮影のときには役立ちますが、使い勝手は自由雲台より劣ります。広角レンズ使用して天の川を撮影したり星景撮影をする場合には自由雲台の方が便利です。
【画像処理ソフト】Stella Image
天体撮影をPCで画像処理する際にステライメージ8を使用しています。
上の商品は最新版のステライメージ9です。
過去の参考記事
600mm超望遠レンズで天体撮影⑥ アンドロメダ銀河
望遠レンズSIGMA 150-600mm F5-6.3 Contemporaryとポータブル赤道儀スカイメモSを使用してアンドロメダ銀河の撮影に挑戦します。
アンドロメダ銀河については、望遠レンズとポータブル赤道儀を使用した機材構成で過去に何度か撮影しようと試みましたが、近くに目印となる明るい星がないことや望遠レンズの向きについて微調整ができなかったため、うまくいきませんでした。
今回は、望遠レンズの向きを微調整できるように機材構成をアップデートして、撮影を行いました。
目次
広角レンズで撮影したアンドロメダ銀河
下の写真は、広角レンズで撮影したアンドロメダ銀河周辺の星の様子です。アンドロメダ銀河は、秋の星座であるアンドロメダ座の方向にあります。
カメラ | Canon EOS70D |
レンズ | SIMGA 10-20mm F3.5 EX DC HSM |
赤道儀 | ポータブル赤道儀スカイメモSを対恒星追尾モードで使用 |
ISO感度 | 1600 |
絞り値 | f/3.5 |
露出時間 | 90sec |
焦点距離 | 10mm (35mm判換算で16mm) |
その他 | ソフトフィルター kenko プロソフトン(A)を使用 |
Photoshop Elementによりレベル調整やノイズ低減処理 |
アンドロメダ銀河自体は、オリオン大星雲は別格としても、他の銀河や星雲などよりも大きく明るいため、広角レンズとポータブル赤道儀を使用して、アンドロメダ座の方角にカメラを向けISO1600で1分間程度の露出をすると、小さいけれども特に問題なくアンドロメダ銀河を撮影することができます。そのため、600mmの望遠レンズでも簡単に撮影できそうな気がしていましたが、実際はそう簡単にいきませんでした。
カメラ | Canon EOS70D |
レンズ | Canon EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STM |
赤道儀 | ポータブル赤道儀スカイメモSを対恒星追尾モードで使用 |
ISO感度 | 1600 |
絞り値 | f/3.5 |
露出時間 | 60sec |
焦点距離 | 18mm (画像編集ソフトによりトリミング) |
その他 | Photoshop Elementによりトリミング、レベル調整、ノイズ低減 |
600mm超望遠レンズで撮影したアンドロメダ銀河
カメラ | Sony α7Ⅲ |
レンズ | SIGMA 150-600mm F5-F6.3 DG OS HSM Contemporary |
赤道儀 | ポータブル赤道儀スカイメモSを対恒星追尾モードで使用 |
ISO感度 | 1600 |
絞り値 | f/10 |
露出時間 | 10sec 183枚(total 1830sec) |
焦点距離 | 600mm |
その他 | 183枚のRAWデータをStellaImage8で加算合成後 |
レベル調整やトーンカーブ調整などを実施 |
アンドロメダ銀河は中心部以外全体的に淡いため、総露出時間が短いとノイズの影響を受けたり、アンドロメダ銀河内の暗黒星雲など細部の様子が見えづらくなったりします。上の写真では総露出時間約30分ほどのデータを加算合成しましたが、できればもっと総露出時間を長くすればよかったと感じています。基本的に寒い方がカメラのノイズは小さくなるので12月初旬の標高1500mの氷点下の気温の中で撮影をしており、寒さで長時間の撮影には耐えられませんでした。
アンドロメダ銀河は、焦点距離600mmで撮影すると横一杯に広がっています。中心がずれると端が切れてしまうため、微調整が重要になります。ライブビューではアンドロメダ銀河自体は見えず、ライブビューで見える周囲の星からアンドロメダ銀河の位置を想像して微調整する感じです。
撮影機材の構成
比較的F値が小さく明るい広角レンズを使えば、小さいながらもアンドロメダ銀河を撮影することができるのですが、ポータブル赤道儀と焦点距離600mmの超望遠レンズを使用してアンドロメダ銀河を拡大して撮影しようとするとかなり大変な作業でした。何度も失敗を重ねて、結局撮影に1年以上かかってしまいました。
アンドロメダ銀河を撮影するため、撮影機材について以前の構成から2点アップデートしています。
②ポータブル赤道儀とカメラの固定方法を自由雲台からスカイメモS用の微動台座に変更
【使用カメラ】 Sony α7Ⅲ
以前使用していたCanon EOS70Dに対してノイズ性能を良くするために購入しました。
EOS70Dでは天体撮影時の高感度ノイズが気になり高感度ノイズの少ないカメラを探しており、Sony α7Ⅲを選びました。
天体撮影以外でもオートフォーカス性能がEOS70Dに比べ格段に良いため、動きのある撮影でもピントの合ったシャープな写真を撮ることができます。ただ、ライブビューやファインダーの像にタイムラグがあるのがデメリットです。特に画面を横切るように動く被写体の場合、その影響をすごく感じます。
これまで使用していたCanon EFマウント用レンズをα7Ⅲで使用するためシグマのマウントコンバーターMC-11を使用しています。
【使用レンズ】 SIGMA 150-600mm F5-F6.3 DG OS HSM Contemporary
以前より焦点距離600mmでの天体撮影に使用しているレンズです。アンドロメダ銀河を撮影する際は、まず150mmでアンドロメダ銀河が中心に来るように微調整をおこない、その後600mmにズームしてさらに微調整をしています。カメラのライブビューやファインダーでは、アンドロメダ銀河が暗すぎて見えません。高感度で撮影し、その画像を見ながら位置の微調整を行う必要があるため、時間がかかります。
【ポータブル赤道儀】 Kenko スカイメモS&微動台座
以前に使用していた自由雲台では、微調整が効かないため、アンドロメダ銀河をフレーム中央にもってくることができませんでした。微動台座は、赤緯軸回転の微調整ができるようになっています。赤径軸回転の微調整は、追尾モータの正逆回転12倍速を使用することで行っています。赤経軸と赤緯軸の微調整を行うことで、アンドロメダ銀河を捉えることができました。カメラは微動台座に直接固定することで振動にブレを抑えています。焦点距離600mmでも10秒程度ならポータブル赤道儀で十分に追尾可能です。露出時間を延ばすと追尾のズレというよりも、振動によるブレの影響が出てきます。
微動台座は望遠レンズを使用した星雲などの天体撮影のときには役立ちますが、広角レンズ使用する場合には特に必要がありません。
また、天体撮影をするときはポータブル赤道儀よりも値段は高いですが天体望遠鏡用の赤道儀を使用した方が作業も楽で追尾精度もよくなるため、いい写真が撮れると思います。
その様に考えると微動台座を使ってまでポータブル赤道儀で天体撮影をするのは、あまり意味がないなと感じます。
【画像処理ソフト】Stella Image
天体撮影をPCで画像処理する際にステライメージ8を使用しています。
上の商品は最新版のステライメージ9です。
まとめ
今回、ポータブル赤道儀と焦点距離600mmの超望遠レンズを使用してアンドロメダ銀河を撮影することができました。
しかし、超望遠レンズを使ったアンドロメダ銀河の撮影では、他の天体以上にカメラの方向を微調整することが必要になります。
また、露出時間もオリオン大星雲などに比べ長くする必要があります。
望遠レンズを使用したアンドロメダ銀河の撮影は、ポータブル赤道儀を使用して手軽に撮れる感じではないため、赤道儀式の天体望遠鏡など、より本格的な機材を使って撮影する方がおすすめです。
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