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600mm超望遠レンズで天体撮影③ M8干潟星雲とM20三裂星雲

 デ ジタル一眼レフと望遠レンズSIGMA 150-600mm F5-6.3 Contemporaryとポータブル赤道儀SKYMEMO Sを使用して天体撮影をやってみるシリーズの3回目です。今回は、夏の代表的な散光星雲であるM8干潟星雲とM20三裂星雲を撮影してみたいと思います。

 どちらも夏の南の空に輝く「いて座」の方向にあり、M8、M20 などM(メシエ)番号がついていることからも分かるように、昔から知られている比較的明るく観測しやすい星雲です。

 

目次

 

撮影機材の構成

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 カメラ:CANON EOS 70D

 レンズ:SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM Contemporary

 ポータブル赤道儀:Kenko SKYMEMO S

 三脚:ベルボン Sherpa 635 Ⅱ

 

 今回の撮影では、ポータブル赤道儀にカメラと望遠レンズを搭載しているので上部が重く、写真のように見た目がかなり不安定な状態なのですが、焦点距離600mmにズームするとレンズの筒がさらに伸びた状態になり、さらに不安定さが増します。

 以前にM42オリオン大星雲を撮影した時と同じ構成です。

 ポータブル赤道儀とカメラを接続している自由雲台については、現在使用しているものより剛性があり、細かな方向の調整ができるものがないか探しているのですが、これといった物が見つかっていません。なので、以前のままです。

 

 機材の詳細については、下の記事を参照ください。

hoshi-hana.hatenablog.jp

 

キットレンズで撮影した「いて座」の方向

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 まずは、キットレンズの Canon EF-S18-135mmを使用して、焦点距離18mmでいて座の方向を撮影しました。夏の南の空に輝く「いて座」の中のひしゃく形に並ぶ6つの星は、南斗六星と呼ばれていますが、そのひしゃくの柄の先端の近くにM8干潟星雲とM20三裂星雲はあります。今年(2018年)の夏は、土星がちょうどこの近くで明るく輝いており、いい目印になります。※7/18「木星がちょうどこの近くで・・・」と間違えていたのを修正しました。

 撮影した日は、典型的な夏の天気で衛星画像を見ても日本列島に雲一つないような快晴状態だったのですが、空気中に水蒸気が多く、写真の星々も少しぼやけた状態で写っています。そのため、星雲などを撮影するには、あまり良くない条件だったと思います。

 

焦点距離600mmで撮影したM8干潟星雲

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レンズをキットレンズのEF-S18-135mmから望遠レンズSIGMA 150-600mmに変更して、M8を狙います。M8は、ピンク色に輝く星雲の色や大きさが特徴的で、干潟星雲とかラグーン星雲と呼ばれています。

 焦点距離600mmだと視野が狭く、M8周辺に目印になる明るい星がないため、導入には大分時間がかかってしまいました。オリオン大星雲(M42、M43)を撮影した時は、オリオン座の小三つ星を目印にすることで比較的に方向を定めやすかったのですが、今回は目標導入の難易度が少し上がります。

カメラやレンズの重さで自由雲台のクランプが足らず、レンズがお辞儀して目標が視界から外れてしまう問題は以前のままで、上の写真では、M8が中心から少しずれた場所に写ってしまっています。

 1枚当たりの露出時間は、オリオン大星雲を撮影した際に問題となった、微小振動によって星像がブレてしまうのを低減するため、15秒⇒10秒に短縮してみました。今回は、風がほとんどなかったのですが、それでもブレてボツになった写真が半分ほどありました。(判定基準は、オリオン大星雲撮影の時よりも厳しくなっています。)それらの影響もあって、合成した写真の合計の露出時間が、不足気味になっています。

 自分的には、撮影時の気温が高かった影響で寒い時期に撮影したオリオン大星雲の写真に比べて、だいぶノイズが多い写真になってしまったと感じています。

 夏の気候は、あまり星雲の撮影には向かないようです。どちらかといえば、春先の方が気温も低く水蒸気量も少ないため、夏の星空を撮影するのにも向いているかもしれません。

上の写真のうちM8干潟星雲の部分をトリミングしてみました。拡大するとノイズが多いことが分かります。

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焦点距離600mmで撮影したM20三裂星雲

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 M8干潟星雲より少し、上の方(北側)にM20三裂星雲があります。M8と一緒に写っている写真もよく見られる程2つの星雲は近くにあり、M8が見つけられたらM20も観察してみましょう。

 M20は、上側が青色で下側が ピンク色と色のコントラストがとても綺麗です。また、下側のピンク色の星雲は、暗黒星雲により3つに引き裂かれたように見えるため、三裂星雲と呼ばれています。

 三裂星雲は、干潟星雲より小さく暗いため撮影が少し難しくなりますが、望遠レンズ+ポータブル赤道儀というお手軽構成でも、結構良く星雲の様子を撮られられたと思います。こちらも、できればもっとノイズを少なくしたいところです。

 ちなみに、上の写真は、ISO12800と当ブログの他の写真に比べISO感度が跳ね上がっていますが、試し撮り時の設定を変え忘れたことによる設定ミスです。もしかしたらISO感度の設定ミスの影響で写っているのかもしれません。通常使うISO1600では、写らなかったかもと思うとちょっと微妙な心境になるのでした。

 また、時期を改めてトライしてみようと思います。

 

あとがき

 600mm望遠レンズとポータブル赤道儀を使用して、M8干潟星雲とM20三裂星雲を撮影した感想として、比較的簡単な構成の割には、それぞれの星雲の特徴などが分かり、それなりによく写っているなという印象でした。

 もっと鮮明な写真を撮影したいという思いもあるのですが、そうすると本格的な天文機材が必要になってくるでしょう。ですが、本格的な機材はそれなり価格、重量、大きさになります。

 お金を貯めて価格面をクリアできたとしても、重量面で、条件の良い場所を探してあちこち持ち運んで撮影するという今のスタイルとは合わず、大きさの面では、どこに保管収納するのかと問題もあり、ポータブル赤道儀が今のベストだという結論に落ち着いています。

 とりあえず、現状ベースで小改良を重ねて撮影を続けてみたいと思います。

 

後日、M20三裂星雲について再度撮影を行いました。

hoshi-hana.hatenablog.jp

 

撮影地

 福島県只見町 国道252線沿い

 光害の影響の少ない綺麗な星空が広がっています。星雲や銀河や星団などの撮影では、夜空の暗さがとても重要になってくるため、この場所を選んで撮影に来ています。

 夜空の暗さを重視して関東地方から出掛けるには、ここか、長野のしらびそ高原かの2択になるのでは、と思っています。

 夏は、南からの湿った風の影響で、太平洋側の山沿いは空気が湿っているかなと思い、今回、福島県只見町を選択しましたが、こちらも予想以上に暑く湿気が多く、霧が発生していました。

 googleマップでは、六十里越峠街道記念碑にマーカーを置いていますが、そこよりも少し登った道沿いに広い駐車場があります。北側に山が迫っていますが、北極星は見えるため、赤道儀の極軸合わせに北極星を使えます。

 

 

撮影に使用した機材の紹介

ポータブル赤道儀

今回の撮影に使用したポータブル赤道儀は、kenkoのスカイメモSです。(微動雲台、アリガタプレート、バランスウェートは使用していません)

Kenko ポータブル赤道儀 スカイメモS レッド 455173

Kenko ポータブル赤道儀 スカイメモS レッド 455173

  • 発売日: 2015/04/21
  • メディア: エレクトロニクス
 

 

ポータブル赤道儀を購入する際に、Vixenのポラリエと迷ったのですが、スカイメモSの形の方が一般的な天体望遠鏡赤道儀と同じフォルムで安心感があったこともあり、スカイメモSを選びました。

実際にカメラ用三脚に取り付けて撮影しようとすると天体望遠鏡赤道儀に比べ安定感がなく、大丈夫かなと心配になりましたが、現状では期待以上の結果を出してくれています。

※この手のポータブル赤道儀を使用してカメラで星空を撮影する場合は、三脚とポータブル赤道儀の固定用、ポータブル赤道儀とカメラの固定用に2個の雲台が必要です。

hoshi-hana.hatenablog.jp

 

 

カメラ

カメラは、Canon EOS70Dを使用しています。

星空の撮影をしていて、思いのほか役に立っているのがWi-Fi接続機能です。iPadiPhoneとカメラをWi-Fi接続することで、iPadiPhoneなどのスマホタブレット端末からワイヤレスで基本的なカメラ操作(レリーズ、絞り、ISO調整など)ができ、撮影した写真の確認もスマホタブレット上ですぐにでき、各値の調整に役立っています。

星空の撮影では露出時間が必要なため、以前であれば長時間、夏の蚊や冬の寒さにさらされていたのですが、ワイヤレスになったことでカメラのセッティングができれば、撮影は近くに停めた車の中から出来るようになりすごく快適になりました。

現在EOS70Dの後継にあたるEOS90Dが発売されています。

Canon デジタル一眼レフカメラ EOS 90D ボディー EOS90D

Canon デジタル一眼レフカメラ EOS 90D ボディー EOS90D

  • 発売日: 2019/09/20
  • メディア: エレクトロニクス
 

 

レンズ

 レンズは、SIGMA 150‐600mm F5-6.3 DG OS HSM Contemporaryを使用しています。600mmまでカバーしている望遠レンズの中でコストパフォーマンスが良くネット上の評判の良いものとして選んでいます。

 自分が購入した目的の1つは、月の写真を撮ることでした。手振れ補正機能を使うことで手持ちでもそこそこブレずに月を写すことが出来ますが、やはりきちんと三脚に固定して写した方がシャープに写ります。三脚に固定して撮影する場合は、手振れ補正をONにすると逆にブレる場合があり、その際は手振れ補正をOFFにして使用します。

望遠鏡よりも持ち運びに便利なため、ズーム機能をファインダー代わりに天体望遠鏡としても使えないかなぁとも考えています。

 下のリンクは、ニコン用マウントのレンズにリンクしています。キヤノン用やSIGMA用のマウントのレンズはリンク先で「キヤノン用」「SIGMA用」のスタイル名を選択して下さい。

SIGMA 望遠ズームレンズ Contemporary 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM ニコン用 745554

SIGMA 望遠ズームレンズ Contemporary 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM ニコン用 745554

 

 

このブログ記事に関連した本の紹介

 

 

 さまざまなレンズを使用して星空を撮影した写真を比較しているマニアックな本です。

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写真レンズ星空実写カタログ: 星空撮影&夜景撮影のための

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